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猪木寛至の見たゴルバチョフとヤナーエフ「ソ連にはお喋りは似合わない」

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プロレスラーで国会議員としても活躍した猪木寛至(アントニオ猪木)は、ロシアの政治家であるミハイル・ゴルバチョフ、またソ連邦時代にクーデター事件の首謀者の一人となったゲンナジー・ヤナーエフについてどのように見たのか。

猪木のゴルバチョフ観、ヤナーエフ観は、元外交官で作家・佐藤優のノンフィクション小説『自壊する帝国』から窺うことができる。

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この記事の主要な登場人物

アントニオ猪木(アントニオいのき、英: Antonio Inoki, 1943年2月20日 – )は、日本の元プロレスラー、実業家、政治家。本名:猪木 寛至(いのき かんじ)。神奈川県横浜市鶴見区出身。血液型AB型。新日本プロレス設立後のキャッチフレーズは「燃える闘魂[3]」。

(中略)

プロレスラーとしては新日本プロレスの創業や異種格闘技戦で活躍。政治家としては参議院議員(2期)、スポーツ平和党代表、日本維新の会副幹事長、次世代の党国民運動局長兼参議院政策調査会長、日本を元気にする会最高顧問、同代表などを歴任。

引用:Wikipedia

ミハイル・セルゲーエヴィチ・ゴルバチョフ(ロシア語: Михаил Сергеевич Горбачёв(ミハイール・スィルギェーイェヴィチュ・ガルバチョーフ)、ラテン文字表記:Mikhail Sergeevich Gorbachev、1931年3月2日 – )は、ソビエト連邦及びロシア連邦の政治家で、ソ連最後の最高指導者。歴代最高指導者のうち、1922年のソ連成立後に生まれ、且つ2020年現在存命の最高指導者経験者はゴルバチョフだけである。

引用:Wikipedia

ゲンナジー・イワノヴィッチ・ヤナーエフ(Геннадий Ива́нович Янаев、Gennadii Ivanovich Yanayev、1937年8月26日 – 2010年9月24日)は、ソビエト連邦の政治家。ソ連副大統領。1991年8月クーデターの首謀者の一人。ロシア人。

引用:Wikipedia

「ソ連にはゴルバチョフのようなお喋りよりもヤナ―エフの方が似合っている」

当時のロシア(ソ連)は西側諸国に対して閉鎖的で、西側のエンターテインメントに関する情報が少なかったように思えるが、猪木対モハメド・アリの異種格闘技ビデオは闇市場で出回っており、意外にもアントニオ猪木はソ連で尊敬されていたという。

それもあって、国会議員として政治活動を行っていた猪木は外交官の佐藤優の引き合わせで、当時ゴルバチョフ大統領の下で副大統領を務めていたヤナーエフと会う機会を作ることができた。

ヤナーエフとの会談の後、手ごたえを感じた猪木は佐藤優とこのような言う。

「ヤナーエフはなかなかの人物だね。腹にイチモツ持っているよ。ただ、ゴルバチョフとはしっくりいっているという感じじゃないな。ヤナーエフはバカーチンを嫌っているよ」

引用:佐藤優『自壊する帝国』(新潮社、2006年)271頁

猪木はヤナーエフを「なかなかの人物」と評価した上で、ゴルバチョフとの仲がうまくいっていないことを察した(ちなみにバカーチンは最後のKGB議長でやはりゴルバチョフに近い立場らしい)。

そしてその猪木とヤナーエフの会談から約3カ月後、ヤナーエフはクーデターを起こす。

すると佐藤優のもとに猪木が電話をかけてきて、このような会話をしたという。

「佐藤さん、おめでとうございます。ヤナーエフさんがついにクーデターを起こしましたね。引き合わせてもらってほんとうによかったです。この前会ったときヤナーエフは何か考えていると思ったが、こんなでかいことを起こすとは思っていなかった」

「猪木先生、最終判断はまだ早いです。流れがどうなるか見えていません」

「佐藤さん、ソ連にはゴルバチョフのようなお喋りよりもヤナーエフの方が似合っているように思う。共産党の難しい人たちが権力についたら、普通の外交官じゃ付き合えないだろうから、佐藤さんの活躍の場は前よりも増えると思いますよ」

引用:佐藤優『自壊する帝国』(新潮社、2006年)367,368頁

西側陣営である日本からすれば敵方であるソ連で、改革派ではなく保守派のヤナーエフのクーデターが成功したというのに、あっけらかんとして佐藤に「おめでとうございます」などと言う猪木が面白い。

また西側諸国では好意的に見られていたゴルバチョフについて、「ソ連にはゴルバチョフのようなお喋りよりもヤナ―エフの方が似合っている」などと言い放つ猪木の反骨性は実に痛快である。

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政治家アスリート
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