山口組から分裂した一和会の有力者だったヤクザ・加茂田重政は、四代目山口組組長・竹中正久の射殺を指揮した同じ一和会の石川裕雄についてどのように見ているのか。
加茂田重政は石川裕雄について著書『烈侠』で言及している。
この記事の主な登場人物
加茂田重政
加茂田は四代目山口組から分裂した「一和会」の中心人物だった。
世間一般では、NHK記者のインタビューに対して「来たらこっちもやります、ケンカはします。それははっきり言っときます、来たらね」と答えたニュース映像で広く知られている。
石川裕雄
「わしはなにも思わんな。極道として当たり前やろ」
石川裕雄はその「敵組織トップの竹中正久組長射殺」という大きな戦果を作ったことから、ある意味では伝説的な人物だが、それにしては加茂田の言葉は意外なほど素っ気ない。
加茂田は『烈侠』で次のように手短に述べている。
竹中四代目を弾いた石川裕雄は旭川刑務所にいるが、「ヤクザになったことも、事件も後悔してない」と言うとるようやな。せやから反省がないっちゅうことで出てこられへんのか。
石川は本になっとるし(木村勝美『極道の品格』メディアックス)、孫が買うてきて読んでたわ。「かっこええ、この人!」って言うて。
そのようなことを決行した石川裕雄らに対してはどう思うか? わしはなにも思わんな。極道として当たり前やろ。
引用:加茂田重政『烈侠』(2016年・サイゾー)181頁
加茂田重政『烈侠』の見どころ・読みどころ
この記事の引用文は加茂田重政『烈侠』からのものである。
「歴史は勝者が作る」という言葉があるように、どうしても結果がはっきりしてから振り返った時には勝者の言い分が強くなりがちである。
だから加茂田重政の『烈侠』の面白さは、まず「一和会」という敗者の視点から書かれた貴重な記録であるということだろうか。
加茂田の眼から見て竹中正久や山本広がどう見えていたのか、また抗争まで発展していった経緯などを興味深く読むことができる。
また、山一抗争で負けたために武闘派イメージにケチがついてしまった加茂田重政だが、実際にはイケイケのヤクザで、その加茂田の個人史として読んでも興味深い。
くわえて、当時もっとも名前が売れていたヤクザの1人だった加茂田重政は芸能人とも付き合いが広かったらしく、例えば菅原文太、松平健、梅宮辰夫、錦野旦、細川たかし、若山富三郎らが、加茂田をはじめとする極道や親族・関係者らと当たり前のように談笑する写真など、表に出るタイミングが違えば大きなスキャンダルになったであろうような写真が大胆に掲載されている。
ところで呆れたのは右翼の田中清玄で、この著書『烈侠』の中にも名前が出てくる。いったいどこまで顔が広いのだろうか。
もっとも田中清玄は加茂田の親分の田岡一雄と親しかったのだから、名前が出てくるのも当然なのかもしれないが。
ご紹介した加茂田重政の『烈侠』は、Amazonの電子書籍読み放題サービス『Kindle Unlimited』でも読むことができる。(2022年11月11日閲覧時における情報)