北方謙三とギッシング「『ヘンリ・ライクロフトの私記』は繰り返し読んだ」

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ハードボイルド作家の北方謙三は、あるインタビュー記事の中で繰り返し読んだ作品としてあまりに意外な小説家の作品を挙げている。

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『ヘンリ・ライクロフトの私記』は何度、読み返したかわからない

北方はインタビュアーとのやり取りの中で、自分の読書遍歴について語る中でその作品・作家について触れている。

北方 : (中略)これ、不思議な小説なんだよ。ヘンリ・ライクロフトという売れない小説家の生活が淡々とつづられているだけ。ある日、友人の遺産が転がり込んで、書いて生きていくには、何の不自由もない生活を手に入れる。じつに静謐な小説。

―― 北方さんの憧れの生活がそこにあるのでしょうか?

北方 : そうなのかもしれない。質素だけど、おいしい食事と暖かい部屋があって……。最初、読んだ頃、ギッシングの自伝だと思ってんだよ。それが、やはり大学生の頃に「新潮」で林房雄の「高原」という小説を読んだ時に、「ライクロフトの私記」が自伝風の創作なんだと知った。だから、ギッシングがどうしても手に入れたかった生活が書かれているのかも。何度、読み返したかわからない。

引用:作家の読書道「第5回:北方 謙三さん」

取り上げた理由 あまりに意外な取り合わせ

これを取り上げたのは、ハードボイルド作家である北方謙三が古典的でかつまったく文学的方向性の違う作家・作品の名前を挙げたのが意外過ぎたからである。

私もこのネット記事で初めてギッシングという作家・『ヘンリ・ライクロフトの私記』という作品を知りさっそく読んでみたのだが、その内容は「若い時分に苦労した売れない作家が幸運にもまとまった金銭を手に入れて自然に囲まれた静かで落ち着いた生活をしつつ、昔の苦労や子供時代、自分の頑固で融通の利かない気質、現代の風潮、祖国イギリスの国民気質などについて内省を巡らす」というもので、やはりハードボイルド小説家が愛読書に挙げる作品とは到底思えず、意外の感に打たれた。

人物

北方謙三

北方 謙三(きたかた けんぞう、1947年10月26日 – )佐賀県唐津市の出身。大学時代は左翼学生運動にも参加していたという。代表作は『弔鐘はるかなり』(1981年)『友よ、静かに瞑れ』(1985年)『三国志』(1996年)『水滸伝』(1999年)などでジャンルはハードボイルドと歴史小説が中心である。

ジョージ・ギッシング

ジョージ・ギッシング(1857年11月22日 – 1903年12月28日)は、19世紀イギリスの小説家。イングランド北部のヨークシャー州・ウェイクフィールド出身。秀才で古典の教養も深かったが、wikiによれば恋した女性のために窃盗などして落魄したという。それなりの文学的名声も得たが、『ヘンリ・ライクロフトの私記』にあるような経済的ゆとりをもった生活は生涯することはなく、窮乏のうちに死んだ。代表作は『ヘンリ・ライクロフトの私記』、紀行文『イオニア海のほとり』、評論『チャールズ・ディケンズ論』など。
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