暴力団組長の長野修一は政治家の小泉純一郎をどう見たのだろうか。
長野修一は小泉純一郎について、木村勝美の著書『竹中四代目暗殺事件のヒットマン・長野修一』に収録されている長野自身による獄中書簡の中でふれている。
この記事の主要な登場人物
長野修一
小泉純一郎
「アメリカさんのご機嫌ばかり取ってます」
『竹中四代目暗殺事件のヒットマン・長野修一』の大部分は、獄中の長野修一が「S」氏という獄外の世話人に宛てた手紙で占められている。
その中で長野は政治家の小泉純一郎に幾度かふれている。
小泉総理も公約では自民党をつぶしてでも構造改革はやると言っていたのですが、いまではすっかり忘れて、アメリカさんのご機嫌ばかり取ってます。どうするのですかね、こんなに失業者が増えて。
引用:木村勝美『竹中四代目暗殺事件のヒットマン・長野修一~獄中書簡356通全公開~』(かや書房、2020年)48頁
日本はあの戦争に負けてから『武器を一切持たない』ということで今日まできたんですよね。
ところがどうも小泉さんは戦うことが好きみたいで、危険なところに行かせようとしております。
ちなみにあの総理は『偏屈の変人』みたいだから、私は好きになれんです。だが、何かの折に私たちに恩赦でもくれるというんであれば、好きになり応援もするのですが、これは勝手すぎるか。
引用:木村勝美『竹中四代目暗殺事件のヒットマン・長野修一~獄中書簡356通全公開~』(かや書房、2020年)51頁
8月15日、晴れ。今日は終戦記念日。小泉総理の靖国参拝。新聞、テレビが騒ぎ立てる。マスコミの騒ぎと共鳴して中国や韓国から抗議がくる。俺は小泉総理の行動に感動した。
引用:木村勝美『竹中四代目暗殺事件のヒットマン・長野修一~獄中書簡356通全公開~』(かや書房、2020年)117頁
『竹中四代目暗殺事件のヒットマン・長野修一 ~獄中書簡356通全公開~』(木村勝美)の読みどころ
引用は木村勝美『竹中四代目暗殺事件のヒットマン・長野修一~獄中書簡356通全公開~』からのものである。
木村勝美の『竹中四代目暗殺事件のヒットマン・長野修一』は、その副題の「獄中書簡356通全公開」の通り、大部分は長野から知人の「S」氏宛ての獄中書簡をそのまま抜粋したもので構成されている。
木村勝美は80歳、長野修一は75歳であり、互いに高齢者同士のやり取りとなった。
マスコミ嫌いの長野だったが、木村の「将来若いジャーナリストの執筆資料にしたい」という言葉に惹かれて取材を引き受けるに至った。しかし2人の面会の許可は下りなかったという。
それもあってか、木村勝美は将来の執筆材料としての資料性を重視したとしており、ひたすら長野の獄中書簡の抜粋が続く形式になっている。
その大部分は、長野の獄中生活やその時々の思いなど、淡々とした言葉が綴られるものである。
個人的に面白かったことの一つは、どうしても暇を持て余す獄中生活の楽しみとしての読書で、様々な本が出てくることである。
出てくる書名を一つずつ読んで、それらをすべて書き起こそうかと考えていたが、あまりにも膨大な量の本が出てくるので途中で諦めてしまったほどである。
長野が獄中で読む雑誌として、暴力団と右翼団体は親和性が高いが、保守系の「WILL」「SAPIO」「諸君!」などが出てくるのはやはりという気がする。
また長野が「ネットに自分の名前が出てるらしい。どうせろくなことが書かれてないのだからどうにかならないか」と相談するところなど、管理人はネットに書いている者の一人として、妙な気持ちにさせられた。
あとがきでは長野修一が獄中で、山本広宅にロケット弾を撃ち込んで服役していた竹中組組員の安東美樹に襲われた事件の顛末が簡単に書かれている。
それがために刑務所内のイベントが中止になると通告されたために、服役中の各組織の組員が集まって安東が今後手を出さないように約束させられたのだという。
そこでの記述によれば、安東美樹は実話誌が報じる英雄像と微妙に異なり、刑務所内では浮きあがった存在だったのだとか。