元外務官僚で作家の佐藤優は、政治家で総理大臣も務めた森喜朗についてどのように感じていたのか、佐藤優の著書『インテリジェンス人間論』から窺うことができる。
この記事の主要な登場人物
佐藤 優(さとう まさる、1960年〈昭和35年〉1月18日 – )は、日本の外交官、作家。学位は神学修士(同志社大学・1985年)。同志社大学神学部客員教授、静岡文化芸術大学招聘客員教授。
在ロシア日本国大使館三等書記官、外務省国際情報局分析第一課主任分析官、外務省大臣官房総務課課長補佐を歴任。
引用:Wikipedia
森 喜朗(もり よしろう、1937年〈昭和12年〉7月14日 – )は、日本の政治家。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長。
衆議院議員、文部大臣(第105代)、通商産業大臣(第56代)、建設大臣(第62代)、内閣総理大臣(第85、86代)、自由民主党政務調査会長、自由民主党幹事長、自由民主党総務会長、自由民主党総裁(第19代)などを歴任した。
引用:Wikipedia
「森氏は本心から思っている。私は胸が熱くなった」
森喜朗が総理大臣だった当時、加藤紘一によるクーデター、いわゆる「加藤の乱」が起きた。
この時、佐藤優の『インテリジェンス人間論』によれば、加藤紘一はロシアや北朝鮮に密使を送って、「森政権は近く倒閣するので森喜朗総理とは交渉しない方がいい」というメッセージを送っていたという。
そのことについて森は外務官僚の佐藤優に、「加藤と俺とでは外交の世界でやっていいことと悪いことの線が違うようだ」と話す。
さらに森は佐藤に「俺はもうもたないかもしれない」と弱音を吐き、佐藤はそれに対して「プーチン大統領は森総理を信頼しています。ここで北方領土問題を解決しましょう」と励す。
森氏は目をうるませて「あなたの気持ちは嬉しいよ」といって、森氏の父・森茂喜石川県根上町長のシベリアとの交流の話や、私がはじめて森総理と仕事をした二〇〇〇年四月のサンクトペテルブルグでのプーチン次期大統領との非公式会談の思い出話をした。
「総理、思い出話は早すぎます。森総理の手で平和条約を締結するのです」といって辞去しようとしたら、森氏に「君……」といって呼び止められた。
「君、俺はこれでほんとうにダメになるかもしれない。しかし、君は加藤政権になっても、俺に仕えるのと同じ気持ちで加藤に仕えてくれよ。君の経験と知識が日本のために必要なんだ。加藤になった後も頼む」
誰も見ていない密室での出来事だ。森氏はカッコをつけているわけではない。本心からそう思っているのだ。私は胸が熱くなった。
引用:佐藤優『インテリジェンス人間論』(新潮社、2007年)80頁
佐藤優の著作では、以下のものはAmazonの電子書籍読み放題サービス『Kindle Unlimited』で読むことができる。(2022年11月11日閲覧時の情報)
- 佐藤優・田原総一朗の共著『人生は天国か、それとも地獄か』