田岡一雄の娘でエッセイストの田岡由伎は、田岡一雄についてどう感じていたのか。
それは田岡由伎の著書『お父さんの石けん箱』から窺うことができる。
この記事の主要な登場人物
田岡 由伎(たおか ゆき、1954年8月14日 – )は、日本の実業家、心理カウンセラー、エッセイスト。兵庫県神戸市出身。血液型AB型。
引用:Wikipedia
田岡 一雄(たおか かずお、1913年3月28日 – 1981年7月23日)は、日本のヤクザ、実業家。山口組三代目組長。甲陽運輸社長、芸能事務所・神戸芸能社社長、日本プロレス協会副会長。田岡満(映画プロデューサー)、田岡由伎(エッセイスト、音楽家喜多郎の元夫人)の父(子は異母兄弟)。
引用:Wikipedia
「動物的とも思えるほど、人の気持ちがわかる人」
短大を出たあと、自分は一体何をしたらええんやろ、生きる目的って何やろ、なんて、いろいろとずいぶん悩んだ時期があった。
ひとりで部屋の電気もつけず、音楽もかけず、ジトッとしていることが多かったわけ。たまたま夜中にトイレへ行ったお父さんが、ついでに私の部屋をのぞいて、そんな私を見た。
「おまえ、かわいそうなヤツやなぁ。どこへ行ってええんか、なに見たらええんか、わからへんねんなぁ。そいでも、しゃあないな、それは自分で悩まな」
そう言って、スッと出て行った。あ、お父さん、ほんとに私を愛してくれてる。そう思った。私の悩みをわかってくれてる。でも、それは自分で悩まなしょうがないんやと。突き放して、親でも入り込めない領域だと。それが人間なんだと。私はその時、涙が出て止まらなかった。
お父さんは、動物的とも思えるほど、人の気持ちがわかる人だった。それも一瞬の目の動きなんかで。
仲よしのサチエが婚約した。彼女は韓国人。在日韓国人の人たちは、当時見合い結婚が多かった。それは同国人と結婚すべきだという根強い考え方が強かったからだ。
で、サチエは見合いして婚約して、でも自分では相手がほんとうは気にいらない。うつうつと悩んでいた。
その時、お父さんが部屋へ入ってきた。
「お、サチエ、婚約してんてなあ、よかったなあ」
自分のことみたいに喜んでいる。
「はい」とサチエ。
しかしお父さんは、一瞬の目の動きでサチエの心を読みとった。
「いややったら、やめたらええんや。やめたら」その一言で、サチエはパッとふっきれた。ほんとに婚約を破棄した。
引用:田岡由伎『お父さんの石けん箱』(ちくま文庫、2015年)88、89頁
この後、田岡一雄は由伎からサチエが結婚を取りやめたことを聞き、田岡一雄とサチエは「一回行ったら面白かったのに」「いややわぁ、お父さん!」というやり取りをして笑ったという記述が続く。
本記事に登場する田岡一雄関連の著作では、以下のものはAmazonの電子書籍読み放題サービス『Kindle Unlimited』で読むことができる。(2022年11月11日閲覧時の情報)
- 漫画『三代目山口組組長 田岡一雄物語 完全版』
- 溝口敦『山口組三代目 田岡一雄と殺しの次郎 (竹書房文庫)』