元山口組系・後藤組組長だった後藤忠政は、政治家の安倍晋三についてどう見ていたのか。
後藤忠政は政治家・安倍晋三について、自著『憚りながら』の中で言及している。
この記事の主要な登場人物:後藤忠政と安倍晋三
「考え方は好きでいい政治家だと思ってたんだが…」
後藤忠政は小泉純一郎について言及した流れで、安倍晋三についてこのように述べる。
その小泉の後の安倍さん、俺はあの人の「美しい国」という考え方は好きだったし、いい政治家だと思ってたんだが、(政権の)途中で「腹痛い」って辞めちゃあ、ダメだろ。
学校で級長やってる子供だって、「腹痛い」なんて理由では辞めんぞ。その後の福田さんも投げ出すし、「政権」というものがそんなに軽いもんだったら、そりゃ、あの民主党でも担えるのは当たり前の話だ。
仮にも日本という国のトップだよ。極道の親分なら、ヤクザ辞めなきゃ、明日から懲役に行かなきゃいかんという時でも、辞めずに懲役に行くんだよ。誰だって懲役に行くのは嫌だけど、そうしないと若い衆に示しがつかんもんでな。それが国を背負ってる、日本国民1億2000万の親分が、「腹痛い」って辞めて、国民に示しがつくのかっていう話だ。
引用:後藤忠政『憚りながら』(宝島社、2010年)216ページ
と、後藤忠政は安倍晋三についてこのように述べている。
ただし、後藤忠政の『憚りながら』の出版は2010年なので、2012年の第二次安倍内閣発足以降の安倍に関する批評は含まれてはいない。そのため、現在では後藤忠政の安倍晋三に関する見方は多少変化している可能性もある。
後藤忠政『憚りながら』の見どころ・読みどころ
この記事の引用文は後藤忠政の著書『憚りながら(はばかりながら)』からのものである。
この著書『憚りながら』では、後藤忠政が、父や兄にいじめられていた幼少期の記憶から説き起こし、静岡での愚連隊時代、山口組組長時代など、各時期についてそれぞれ起こった出来事や印象に残ったことなどを語っている。
その面白さは暴力団組長としての後藤忠政の経歴に興味のある人にとっては無論のことだが、そこに出てくる人物の多士済々な顔触れは、仮に裏社会に興味のない人でも興味深く読めるのではないかと思わせるものである。
裏表問わず縦横に繰り広げられる後藤の人物評は、賛否はともかくとして、なるほど例え裏社会であっても位人臣を極めた人はそれなりの一家言を持つに至るものなのだな、と思わせてくれる。
また言うまでもなく、子供から不良少年に、不良少年からチンピラに、チンピラからヤクザに、そしてヤクザ渡世を引退、という後藤忠政のヤクザ渡世を俯瞰できるこの著書は、アウトローに興味のある人なら一度は読んでみても損はないだろう。