批評家の小林秀雄はフランスの哲学者・サルトルをどう見たのか。
小林秀雄は『小林秀雄対話集』(講談社文芸文庫)の大岡昇平との対談の中でサルトルに言及している。
小林秀雄(こばやしひでお)
小林 秀雄(こばやし ひでお、1902年(明治35年)4月11日 – 1983年(昭和58年)3月1日)は、日本の文芸評論家、編集者、作家。(略)
近代日本の文芸評論の確立者であり、晩年は保守文化人の代表者であった。アルチュール・ランボー、シャルル・ボードレールなどフランス象徴派の詩人たち、ドストエフスキー、幸田露伴・泉鏡花・志賀直哉らの作品、ベルクソンやアランの哲学思想に影響を受ける。本居宣長の著作など近代以前の日本文学などにも造詣と鑑識眼を持っていた。
引用:Wikipedia
ジャン=ポール・サルトル
「復讐の念みたいな、残酷なものがある。愛情がないのです」
小林は大岡昇平とサルトルの文章論について語った後で、サルトルの特殊な印象を語っている。
大岡 「存在と虚無」はとにかく七百ページあるそうですよ。
小林 いや、もう願い下げにしときます。あの人の批評には、何か残酷なものがあるなあ。
大岡 なにか爬虫類か、ユダヤ人みたいな肌触りね。
小林 実存主義という様なものには、やっぱり何か心穏やかでないものがあるのだね、それが現れるのかな、やっぱりコンプレックスかね。
大岡 一種のコンプレックスに違いないです。小説にも出ている。
小林 あの鋭さはとてもかなわないと思うが、何か妙なものがあるね、復讐の念みたいな、残酷なものがある。愛情がないのです。
引用:小林秀雄『小林秀雄対話集』(講談社文芸文庫、2005年) 131、132ページ
本記事で扱われたサルトル関連著作では、
- 『NHK「100分de名著」ブックス サルトル 実存主義とは何か: 希望と自由の哲学』
を、Amazonの電子書籍読み放題サービス『Kindle Unlimited』で読むことができる。(2022年11月11日閲覧時の情報)