元山口組系・後藤組組長だった後藤忠政は、元ライブドア社長の「ホリエモン」こと堀江貴文をどう見ていたのか。
後藤忠政は堀江貴文について、村上ファンド創設者の村上世彰や政治家の小泉純一郎とともに、自著『憚りながら』の中で言及している。
この記事の主要な登場人物:後藤忠政と堀江貴文
「チンピラにもなれん小チンピラ」
後藤忠政は、堀江貴文と村上ファンドの創設者・村上世彰について最初に言及してから、特に前者について詳しく批評している。
あいつらのやってきたことは、仕手の連中や中江(引用者注:元投資ジャーナリストの中江滋樹のこと)たちと変わらんだろう。それでいて声がデカイもんで、中江なんかより、よっぽどたちが悪いわ。
こういうホリエモンみたいな、チンピラにもなれんような”小チンピラ”を選挙に担ぎ出したんだから、小泉(純一郎・元首相)もトコトン国民を馬鹿にしてたわな。そりゃ、民主党に(政権)取って代わられるのも当たり前だよ。
マスコミに持ち上げられて有頂天になって、人様の前で「金で買えないものはない」なんて堂々と言うような、品性のかけらもない小チンピラを、よりによって国民の代表を選ぶ選挙に出しちゃいかんだろ。
俺はべつに、頭のなかでそう(「金で買えないものはない」と)思ってる奴が世の中にいたって構わないと思うんだ。でも、それを他人様の前で口にするなと言ってるんだ。口にした時点で小チンピラだよ。
50、60のいい歳した大人が周りにいて、ああいうことを言う馬鹿をなんで引っぱたかないのか、俺なんか不思議でしょうがなかったな。けど結局、亀井(静香・現国民新党代表(原文ママ))と争って負けただろ。選挙民も馬鹿じゃないもんでな。
もっとも、こんな小チンピラを毎日のように取り上げ、いまだにこれにモノを言わせているメディアも、国民を馬鹿にしてるよな。
引用:後藤忠政『憚りながら』(宝島社、2010年)192・193ページ
後藤忠政『憚りながら』の見どころ・読みどころ
この記事の引用文は後藤忠政の著書『憚りながら(はばかりながら)』からのものである。
この著書『憚りながら』では、後藤忠政が、父や兄にいじめられていた幼少期の記憶から説き起こし、静岡での愚連隊時代、山口組組長時代など、各時期についてそれぞれ起こった出来事や印象に残ったことなどを語っている。
その面白さは暴力団組長としての後藤忠政の経歴に興味のある人にとっては無論のことだが、そこに出てくる人物の多士済々な顔触れは、仮に裏社会に興味のない人でも興味深く読めるのではないかと思わせるものである。
裏表問わず縦横に繰り広げられる後藤の人物評は、賛否はともかくとして、なるほど例え裏社会であっても位人臣を極めた人はそれなりの一家言を持つに至るものなのだな、と思わせてくれる。
また言うまでもなく、子供から不良少年に、不良少年からチンピラに、チンピラからヤクザに、そしてヤクザ渡世を引退、という後藤忠政のヤクザ渡世を俯瞰できるこの著書は、アウトローに興味のある人なら一度は読んでみても損はないだろう。