田中清玄の見た土光敏夫「真夏なのに扇風機もクーラーもなく団扇だけ」

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右翼の田中清玄は、東芝社長で経団連の会長も務めた大物財界人、土光敏夫をどのように見ていたのか。

『田中清玄自伝』で田中清玄は、土光敏夫の暮らしぶりの極端な質素さに思わず驚かされたというエピソードを披露している。

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「真夏なのに扇風機もクーラーもなく団扇だけ」

清玄は土光敏夫について、三井の池田成彬、松永安左ヱ門、木川田一隆、大原総一郎といった経済人の名前と並べて、「いずれも第一級のエコノミストでした」と述べている。

そして土光との次のようなエピソードを披露している。

土光さんについては、こんな思い出がありますよ。ある時、京都からきた連中がどうしても土光さんに会いたいというので、連れていった。

横浜・鶴見区のご自宅へ伺ったのですが、畑の真ん中にぽつんと一軒だけ建っている日本風の家で、どう見ても住んでいる人は課長クラスといった感じの家だった。

真夏なのに扇風機がなくて、団扇です。もちろんクーラーなんかない。

そうしたら一緒に行ったうちの一人が、「土光さん、東芝では扇風機を作っているのに、お使いにならないのですか」と聞いた。

土光さん、こともなげにこう言ったなあ。
「あれは売るもんで、使うもんじゃありませんよ」(笑)。
東芝の社長時代の話ですよ。

私は石油関係の仕事などで、土光さんにはずいぶんお会いすることが多かったが、いわゆる料亭なるところで会ったのは、たった一回だけでした。

「社会は豊かに、暮らしは質素に」というのが土光さんのモットーでしたが、今それだけのことを実践している財界人がだれかおりますか。
口で言うのは簡単ですが、実行してみせなきゃ。

引用:『田中清玄自伝』(ちくま文庫、2008年)288頁

『田中清玄自伝』の見どころ・読みどころ

この記事の引用文は『田中清玄自伝』からのものである。

『田中清玄自伝』の面白さは、まずはそこに出てくる人物の異常なまでの幅広さである。

ざっと有名な名前を上げるだけでも、マルクス主義・共産党関係者なら徳田球一、野坂参三、文学者なら太宰治、亀井勝一郎、三島由紀夫、林房雄、禅僧の山本玄峰、右翼の野村秋介、三上卓、四元義隆、王族や皇族関係者なら昭和天皇、オットー大公、スペインのカルロス国王、学者ならハイエク、今西錦司、アウトローでは田岡一雄、ジャック=ボーメル(フランスのギャング)、政治家ならスカルノ大統領、鄧小平、鈴木貫太郎、田中角栄、中曽根康弘、小沢一郎などなど。

これでも一部のほんのわずかな名前を挙げただけで、ともかく到底ここで挙げ切ることのできないくらい多士済々である。

その数もさることながらあまりに広い分野にまたがった人物の名が出てくるため、おそらく『田中清玄自伝』に登場する名前をすべて知っているなどと言える人はほぼいないか、いたとすれば相当な教養人だろう。

くわえて、祖先が会津藩の家老で会津者であることを誇りにしている田中は、竹を割ったような性格をしており、自ずと口吻も力強く断定的になって、有名人や多くの人にとって評価の高い人物を自分の見地から一刀両断してしまうところなど、その語り口の意外性・面白さは読む者に尽きない知的興奮を与えてくれる。

最後に言うまでもないが、その思想の是非はともかく、自分の信念と理想のために世界中を駆けて回った田中の世界観の雄大さ・スケールの大きさは、それに触れる者に強い感動を覚えさせてくれるものである。

この記事の主要な登場人物

田中清玄

田中清玄(右翼)・・・Wikipedia

土光敏夫

土光敏夫(実業家)・・・Wikipedia
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