批評家の小林秀雄は、切り絵画家の山下清をどのように見ていたのか。
小林秀雄は、妹の高見沢潤子とかわした対話の中で山下清に言及したそうだ。
そしてこの対話は、その高見沢の著書『兄 小林秀雄との対話』に記載されている。
本記事中の登場人物
「色彩は美しいかもしれないが、なにも語りかけてくるものがない」
同書の中で、小林は山下清についてこのように述べている。
山下清という人の絵は、色彩は美しいかもしれないが、なにも語りかけてくるものがない。
いくらみていても、その美しさのなかから人間が現われてこない。生活感情っていうのかな、生命感がないんだな。
美しい、鋭敏な色感というものはあるけど、これは、だれにも性欲があるのと同じでね、ほんとうの美しさとはいえないんだ。
小林秀雄といえば、天才と評された骨董家の青山二郎のもとで審美眼を徹底的に鍛えたことで知られている。
その小林が山下清について、ある意味ではあまり高く評価していないような発言をしていたというのは非常に興味深い。
参考文献
先述の通り、小林の同発言は高見沢潤子の著書『兄 小林秀雄との対話』からの引用である。