哲学者のフリードリヒ・ニーチェは、風景画家のクロード・ロランについてどのように考えていたのだろうか。
フリードリヒ・ニーチェのクロード・ロランへの言及は、ニーチェの遺稿集『生成の無垢』の中に見ることができる。
「この英雄的・牧歌的なものは私の魂を暴露するものだ」
『生成の無垢』にあるニーチェの問題の遺稿は、ニーチェの著書『人間的な、あまりに人間的な』(1878年)と『曙光』(1881年)が書かれた時期のものである。
一昨日の夕方ごろ、クロード・ロランにすっかり魅了されて、とうとう長いあいだ激しく泣き出してしまった。こうしたものを体験することが私になお許されていたとは!
私は、この大地がこうしたものを示すとは、そのときまでは知らないでいて、それは優れた画家たちが虚構したものだろうぐらいに考えていた。
この英雄的・牧歌的なものはいまや私の魂を暴露するものだ。
そして、古人たちのすべての牧歌風のものが、一挙に、いまや私に対してあらわにされ、明らかになったのだ――いままで私はこうしたものについて何ひとつとして理解していなかったのである。
引用:『生成の無垢』上巻(ちくま学芸文庫、1994年)550頁、一〇五四
ここでニーチェはクロード・ロランの絵に魅せられて号泣したという体験を語っている。
この時見たものがクロード・ロランの画集なのか、それともロランの本物の絵を見る機会があったのかは分からない。もしかしてデッサン集『真実の書』を持っていたのだろうか。
そしてこの時、ニーチェには今まで漠然と想像の産物だと信じていた「牧歌的なもの」の真実性が一挙に理解できたということである。
それにしても原語が何かは分からないものの、この「英雄的」と「牧歌的」という語の一見矛盾した組み合わせが醸し出す調和は素晴らしい。
本記事で扱われるニーチェの著作では、以下のものはAmazonの電子書籍読み放題サービス『Kindle Unlimited』で読むことができる。(2022年11月11日閲覧時の情報)
- 『ツァラトゥストラはこう言った』上巻 (岩波文庫)
- 『ツァラトゥストラ(上)』 (光文社古典新訳文庫)
- 『この人を見よ』 (光文社古典新訳文庫)
- 『善悪の彼岸 』(光文社古典新訳文庫)